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「遠近を抱えてPartⅡ」(第9展示室)

◆作品紹介◆

本作は1975年から10年間ニューヨーク滞在中に制作され、1986年、富山県立近代美術館主催「86富山の美術」で展示され る。
1993年、大浦は制作の意図を次のように語った。 「自分から外へ外へ拡散していく自分自身の肖像だろうと思うイマジネーションと、中へ中へと非常に収斂していく求心的 な天皇の空洞の部分、そういう天皇と拡散していくイマジネーションとしての自分、求心的な収斂していく天皇のイマジ ネーション、つくり上げられたイマジネーションとしての天皇と拡散する自分との二つの攻めぎあいの葛藤の中に、一つの 空間ができ上がるのではないかと思ったわけです。それをそのまま提出することで、画面の中に自分らしきものが表われるのではないかと思ったのです。」(大浦信行「自分自身の肖像画として―作家の立場から」、1993年6月6日、富山近代美術 館問題を考えるシンポジウム)

製作年:2019年 作品形態:映像 作家名:大浦信行

◆作家紹介◆

 

  • 大浦信行:1947年富山県(日本)生まれ 川崎市(日本)拠点

  • 主な発表作品

1997 第2回エジプト国際版画トリエンナーレ展(エジプト)

1993 マストリッツ国際グラフィックビエンナーレ展(オランダ)

1989 バルナ国際版画ビエンナーレ展(ブルガリア)

1985 第16リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展(スロベニア)

1987 第7回クラコウ国際版画ビエンナーレ展(ポーランド)

◆「表現の不自由展・その後」に至るまで◆


本作は富山県での展覧会終了後、県議会で「不快」などと批判され、地元新聞も「天皇ちゃかし、不快」などと報道し、右翼団体の抗 議もあり、図録とともに非公開となる。93年、美術館は作品売却、図録470冊全て焼却する。その後、6年越しで争った作 品公開と図録再版の裁判も敗訴する。2009年沖縄県立博物館・美術館「アトミックサンシャインin沖縄」でも展示を拒否 されている。 事件後、大浦は映像作品のなかで「遠近を抱えて」の図像を繰り返し用いる。「あいちトリエンナーレ2019」を契機に制作された『遠近を抱えて PartII』においては、作品を燃やすシーンが戦争の記憶にまつわる物語のなかかに挿入され、観る者に「遠近を抱える」こと の意味をあらためて問うものになっている。が、右翼の脅迫と攻撃により展示が中止され、後半の一週間展示が再開された。
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